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4人の女性が主人公の短編小説【Girls Live in Secrets】掲載中
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 世の中には魅力的な男性がいる一方、魅力的じゃない男性もいる。
 そもそも世の中全ての男性が魅力的だったら、「あの人は魅力的だ」といった表現は存在しない。「あの人には目が2つもある!」といった褒め言葉が存在しないのと原理は一緒だ。目が2つあるのは当たり前。だから褒め言葉なんて存在しない。逆に魅力的なのは特別なこと。だから褒め言葉として使われる。つまり魅力のない人が世の中にいるからこそ、「魅力的」という言葉は生まれたわけである。

※※※※※
 
 夜、卒論の仕上げに取り掛かりながら、リョウコはPC画面に向かって話しかけていた。画面にうつっているのは例の28歳起業家、柴田巡(しばた めぐる)氏である。
 彼は取り立てて美男子というわけではないが、その持ち前の知的さでリョウコを魅了している。リョウコが採点する男性の魅力最大ポイントは、知的センスと美的センス。頭がよくて、ファッションを含めた容姿が美しくなければ嫌。この場合の美しいとは「本人に似合っていて、容姿全体の調和が取れているか」。いくら素敵なスーツを着てたって、腕時計がキャラクター時計だったらアウト。また、服と靴のとりあわせが滅茶苦茶でもアウト。さらに、「いくら自分に似合うからって、毎日のびかけたTシャツとジーンズの組み合わせとかありえない!」だそうだ。リョウコの前ではシワ・シミのついた服は勿論のこと、適度にスタイリッシュなファッションをしなくてはならない。
 その点柴田氏は完璧とも言える。適度なジョークも通じ、学問においても情報技術、経済学に精通しているのでリョウコを飽きさせることがない。また、世代のギャップもあるので、昔流行った一世代上のブームなども教えてくれる。リョウコにとっては、唯一対等の立場に立つことが許される貴重な情報源ともいえるのである。
 昨夜は1時間しか寝てないのだと、早々と布団にもぐってしまった柴田氏の寝顔を見ながらリョウコは小さく苦笑する。
「もう少し私の事を気遣ってくれたら完璧なんだけどなぁ…」
 年の差恋愛な上に、遠距離恋愛。一昔前は大変だとされていた遠距離恋愛も、今はネットのおかげで大分楽になった。Skypeは遠距離恋愛カップルの必需品ともいえるだろう。カメラ付きマイクのおかげで顔を見ることもできる。
「ま、珍しく毎日電話くれてるからいいか」
 柴田氏は仕事が忙しくなると連絡不精になるのだが、リョウコの誕生日を忘れてからというもの、毎日Skypeで電話をかけてくる。どんなに疲れていても、必ず電話をくれるようになった。彼は彼なりに気をつかってくれているのかもしれない。今まで3ヶ月も皆勤賞なんてことはありえなかったのだ。
「おやすみ、メグ」柴田氏が完全に眠りに落ちているのを確認してSkypeのビデオ電話を切る。
 普段ならノートパソコンを布団に持ち込んで彼の寝顔を眺めながら寝るのだが、今日は流石にゆっくり寝てほしかった。Skypeを切れば、相手のパソコンはスクリーンセーバー状態になり、部屋も暗くなるだろう。
 リョウコは一つ伸びをすると、卒論の仕上げに戻った。
 
※※※※※

 私は大きなあくびを噛み殺し、エリカの卒論を添削していた。私の卒論はシオリが添削してくれている。
「どうしたのよ。随分眠そうね」赤ペンを片手にしたシオリが珍しそうに言った。
「久しぶりにネットオークションみてたら素敵なバッグみつけちゃって。柄にもなく落札まで粘ってたのよ」
「ミカがバッグ狙うなんて珍しい。てっきり健康脚ツボマッサージ機かと思った」言った後で、「ファッションに関して粘るのはあたしの十八番なのに」とエリカが笑う。
「それでどこのバッグなの?グッチ?プラダ?」そういうエリカの腕には今日もお気に入りのシャネル時計がきらめいている。
「バーバリー」
「えー、バーバリー!?ちょっと地味じゃない?」
 確かにエリカが持つには地味だろう。
「私っていかにもブランド品!っていうのを持つタイプでもないでしょ。ノバチェック柄と赤レザーのコンビが可愛かったのよ。大きさも形も品がよかったし」
「私もバーバリーは好きよ。万年愛されるブランドだと思うわ」シオリはそういってチェック済みの卒論を私に差し出した。「ちなみにいくらだったの?」
「送料込みで11,200円。こんな高いバッグ買ったの初めてよ」
「あら、そこそこいいお値段じゃない。得したわね」
「ありがと。それにしてもエリカの卒論、文法が滅茶苦茶よ。もう少し整理してくれないと、ダチョウが空飛んでいっちゃうわ」対するエリカはシオリの卒論を放り出し、「シオリはもう少し易しい言葉を使ってよ。呪文にしか見えないわ」なんて嘆く始末。卒論提出日まで間もないので、エリカに書き直しを命じて、私たちは解散した。
 
※※※※※
 
 リョウコではないけれど、私だって自分に似合うものを身につけたい。そういう意味でグッチやシャネルとは一生無縁で終わるだろう。それは男性においても同じこと。変に高望みをしようとしないのが私のクセである。
 はやめの昼食を食べていると、斜め前の席に見覚えのある男子学生がやってきた。
「あれ、佐藤さん。久しぶり」
 短髪、たれ目に長身で、ファッションセンスは30点。リョウコの汚点ともいえる元彼だった。

to be continued
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 何故だかしらないけど、私たちの周りには処女が多い。
 嗚呼、あくまで「私たちの周り」であって、「私たち」は処女じゃない。今現在彼氏がいるかいないかは別として、私たちはもう全員経験済み。

※※※※※
 
「卒論なんて嫌になっちゃう」そう言ってエリカがラーメンをすする。
 この日も私たちは大学の食堂でランチをしていた。食べたいものが特に決まってない日はいつもここにくる。ファミレス並みにメニューが多いので、食の好みがバラバラな私たちを全てカバーしてくれるのだ。
「その話題はやめて。私まで頭が痛くなる」資料から目を上げてリョウコが続ける。「ただでさえ彼氏のことで頭が痛いって言うのに」
「だからそんな自己中男とはさっさと別れなさいよ。ねぇ、ミカからも何かいってやって。この子、私がいくらいっても別れようとはしないのよ」シオリはそういいながら珈琲にミルクと砂糖をたっぷり入れてかき混ぜる。
 私は目の前のチョコレートパフェをつつきながらリョウコの彼氏を思い出す。
「基本的に恋人同士のイベントが嫌いで、今年は彼女の誕生日すら忘れた人だっけ?」
「今年起業したばかりなんだから仕方ないじゃない。忙しいのよ」
「そんな男とは別れなさい」生クリームをすくってエリカの口にいれてやる。「リョウコならもっといい人捕まえられるわ」
 リョウコの彼氏は28歳の起業家。有名大学を卒業するくらいなので頭はいいのだが、デリカシーがないのが玉に瑕(たまにきず)。いくら真実であろうと、相手を傷つける言い方をした時点でアウトなのだ。恋人同士ならなおさらそう。女はいつまでもお姫様でいたいと考える生き物だ。つまり騎士役である彼氏にデリカシーがなければ致命的。守られるどころか、逆に傷つけられてしまう。
 しかし28歳の起業家はリョウコが傷つくとわかっていながら真実を口にする。「君は我儘で子供だ」「この事業が破綻すれば君と逢う気はない」。言われたリョウコがどれだけ淋しく悲しい思いをするかなんて彼は考えていないのだ。
「大体、半年も逢ってないんでしょ?いい加減欲求不満を解消するために新しい彼氏探したら?」
 エリカに欲求不満を指摘されたが、当の本人は「逢ってないけど、この前電話でした」とご満悦。
「はいはい、電話機つかってオナニーなんて凄いわね。子機をアソコに入れるのかしら?」
 シオリの突っ込みでリョウコ以外の全員が大笑いする。
「相手が目の前にいないからこそ想像力がかきたてられるの。でも電話の向こうには彼がいて、私の声を聞いたり、私に指示を出したりするのよ。一人でやるより絶対にいいわ」
 私たちが笑っている中、リョウコはうっとり顔で力説。また、彼女の持っていた資料が「想像力とセックスの関係性」だったので、私たちは更に笑わざるを得なかった。リョウコは卒論にまで夜の営みを持ち込むらしい。
「卒論にセックスを持ち込むのもあれだけど、セックスに卒論を持ち込むのはアウトよ」
「やめてよミカ。ヤってる最中に卒論の本文考えちゃいそうじゃない」
「冗談よ」とエリカに返し、私はリョウコの顔をみる。
「つまり、あっちの相性がいいから別れたくないんでしょ」
 リョウコが頷くのと同時に、隣のテーブルに座っている女子大生達が嫌そうな目でこちらを睨み付けてきた。何か文句をつけてくるわけでもなく、ただじっとコチラを睨み付けている。
 私は小さく咳払いをすると、「移動しましょ」と合図をだして立ち上がった。隣のテーブルをチラリと見ると全員納得したように神妙な顔つきで荷物をまとめ、食堂を後にした。

※※※※※
 
 空いている教室に移動した後、私たちは「日本が何故性に対してオープンじゃないのか」について話し合っていた。おかげで28歳の起業家は彼氏生命を一時とりとめることとなった。
「絶対おかしいわよ。どうしてセクシャルな話になると日本人って嫌な顔をするのかしら」
 セックスが三度の飯より好きなエリカだが、やはり人目は気になるらしい。しかし好きなことほど会話のネタにしたいと思うのは当然といえば当然。もし私がレズだったら美男子よりも美女を話題にするだろう。エリカにとってはそれがセックスなのである。
「私たちだって日本人じゃない。でも嫌な顔はしない」
よりいっそう熱く語るエリカに、私たちは苦笑気味。確かに日本は変なところで潔癖性を持っている。だけどこうやって私たちはセクシャルな話を大学でしている。もうその事実だけでいいのでは?
「じゃあ、知らない人からいきなりセクシャルな話題を持ちかけられても平気なの? 私なら絶対無理よ」
 リョウコはそういって資料にマーカーラインをきゅっと引く。
「思うんだけど、私たちって全員処女じゃないじゃない? もしかしてセクシャルな話をタブーにするのは処女なんじゃないかしら」
 確かにシオリの意見には納得できるものがあった。今までつきあってきた男性達は、セクシャルな話を嫌がらなかった。むしろ下ネタとして男性が積極的にセクシャルを会話のネタにすることもある。つまり性に対して極度な潔癖感や抵抗感を抱いているのは女性が圧倒的に多い。
 以前、彼氏と3年以上付き合ったにも関わらず、処女を守り続けた女性の話をきいたことがある。そこまでして処女は守るべきものなのだろうか。それともセックスは汚いものなのだと思われているのだろうか。

 
to be continued
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