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4人の女性が主人公の短編小説【Girls Live in Secrets】掲載中
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 基本的に童貞はめんどくさい。
 ならば処女もめんどくさいのかというと、逆にプレミアがつけられる。
 処女を捧げる時、「君の初めてをもらえて嬉しいよ」なんてクサイ台詞を言う男性はいるが、童貞を捧げられた時、「貴方の初めてをもらえて嬉しいわ」なんていう女性は滅多にいない。せいぜい「まだウブなのね、可愛いわ」ぐらいだろう。何故なら童貞に一からセックスを教え込むのは非常にめんどくさいからだ。しかし、童貞に面と向かって「めんどくさい」ということは出来ず、私たちは仕方なく手取り足取り教え込むのである。
 私は手にした人参を買い物カゴに放り込む。
 ということは、男性は処女をめんどくさいと思ってないのだろうか。
 
※※※※※
 
 私が夕飯の買い物をしている頃、シオリは否応なく処女の価値について考えさせられていた。偶然登録していた一般教養の授業が、今日に限ってFGM(Female Genital Mutilation 直訳すると女性器切除)を取り扱ったのである。
 授業でFGM関連のビデオを見た後、シオリは図書館で徹底的にFGMについて調べ上げ、最終的に「処女に価値を与えているのは男性のエゴだ」という結論を導き出した。つまり女の私たちからしてみれば、処女には何の価値もないというのである。更にいえば、処女がセクシャルな話題を嫌うのは、単なる食わず嫌いだという結論に至った。

※※※※※
 
 翌日、私が文学部のラウンジにいくと、リョウコがエリカにTPOの大切さをみっちり叩き込んでいた。
「別にそういう話をしちゃいけない訳じゃないのよ。ただ、場所によっては表現を変えたほうがいいっていってるの」
「なんで処女のために私が頭使わなきゃいけないわけ? 別にいいじゃない、未知の世界が聞けると思えば嫌な気分にもならないと思うのよね」
「エリカ…。何もしらないからこそ聞きたくないのよ」
 私は自動販売機でココアを買ってエリカの横に腰を下ろす。
「例えば近い将来地球にエイリアンが侵略してくるとする。で、それを既に見た人達がいて、エリカの横でその話をしているとしましょう」
「エイリアンの外見とかについて話してるってこと?」
 温かいココアの缶をホッカイロ代わりに首筋に当てながら、エリカの代わりに合いの手を入れる。
「そう。それが全然知らない未知の単語だったり、普段私たちが使わない単語だけで語られてるとするじゃない。そうすると、聞いてるこちら側としては全く訳がわからないのよ」
「別にいいじゃない、わからなくったって」
 エリカが口をとがらせて反論する。
「ところが、『エイリアンのことを知らない奴は恥ずかしい』って周囲の人たち全員がいってたら、どうする? 自分は全くエイリアンのことをわからないし知らないわけだから、自然とその話題は避けたくなるでしょう」
 エイリアンとセックスを置き換えるのには無理がある。私はぬるくなったココアを飲み込んで口を挟んだ。
「リョウコ、言いたいことはわかるんだけど、それって処女限定の話よね。世の中には経験済みなのに、公共の場でセクシャルな話題をしたがらない人も多いわ。エイリアンじゃ無理がある」
 考え込んでしまったリョウコの代わりに、
「エリカ、ここで『あたしの彼氏は立ちバックが好きで、いつでもどこでもがんがんヤりまくりなのよ!』って大声で叫べる?」
「は?突然何言い出すの、ミカ」
「言えるの?」唖然とした表情を浮かべるエリカを追撃する。「ちなみに私は絶対に無理だけど」
「あたしだって無理」周囲を見回しながらエリカがいう。「こんなに沢山人がいるところで、そんなこといえないわ」
「じゃあ、『あたしは彼氏の事、愛してるの!』なら言える?」
 少しの沈黙の後、「恥ずかしいけど、いえないこともないかも…」という返事が返ってきた。
「つまりはそういうことよ。愛してるって単語は暗に夜の営みのことも指すけど、そうじゃない場合もあるわよね。だから他人が聞いても不愉快な思いをしない。でも逆に『セックスしまくりなの!』って公共の場で叫ばれたらドン引きでしょ? だからたとえ食堂の隅で話していても、多少は気を使いなさいってこと」
「セクシャルな話題はいいけど、表現を間接的にしろってことね」やっと納得した表情でエリカが頷く。「じゃないと私が変人扱いされるのね」
「それに処女にとってはセックスはエイリアンも同然なんだから。尚更抵抗感があるわ」そう茶目っ気たっぷりに付け加えてリョウコのほうを見る。
「別に処女であることが悪いわけじゃないんだけどね」そういってリョウコの手が私のココアをさらっていく。
「私たちだって処女を捨てたくて適当な男と寝たわけじゃないでしょ? なのに20歳までには処女から抜け出そうと必死になる女の子もいるらしいのよね。無理して捨てるものじゃないと思うんだけどな」
 しみじみと語るリョウコの手からココアを奪還しようと私は試みるが、気がつけばココアはエリカの手に渡っていた。
「同感。ていうか極論をいっちゃうとHの楽しさは1人でも楽しめるもの。処女だってことを気にするあまりセクシャルな話題を嫌うんだったら、それは凄く損してるとおもう」
「そうね、とても正論なんだけど、なんだけど、いい加減私のココア返してよぉ!」
「ごちそうさま」という言葉と共に返ってきたココアの缶は、すっかり中身が飲み干されていた。いつもの事だと気を取り直し、私は反撃にでる。
 午前最後の講義がおわったらシオリがここにやってくる。そしたら今回の結論について確認しあおう。そんなことを考えながら、私はエリカとリョウコをくすぐるため、追い掛け回していた。
 
End
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